目次
①アルコールによってどのような疾患のリスクが上がるか
- 肝疾患: アルコール摂取は肝臓癌の危険因子として知られています。アルコールの多量摂取は、肝臓癌に罹患するリスクが有意に上がるという研究結果があります。*9
- 飲酒量が増えるにつれ、がんに罹患するリスクが上がります。1日あたり12.5g以下の飲酒を軽度、12.5gから50gの飲酒を中等度の飲酒と定義すると、口腔および咽頭がんは軽度では罹患するリスクが1.13倍ら中等度では 1.83倍、食道がんは軽度では 1.26倍、中等度では 2.23倍になったという研究結果があります。*3
- 生活習慣病: 過度のアルコール摂取は、心筋梗塞、脳卒中、メタボリックシンドローム等、様々な生活習慣病を引き起こすリスクがあります。アルコールは、痛風の大きなリスクとなる為尿酸値が高い方は特に注意が必要です。*7
- うつ病や不安障害: アルコールは、うつ病や日常生活に支障が出るほど強い不安や恐怖を感じてしまう不安障害のリスクを増加させることがあります。また、アルコールの乱用は既にうつ病や不安障害に罹っている人にとって、症状を悪化させることもあります。
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②適正量について
通常のアルコール代謝能を有する日本人においては「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約20g程度であると考えられています。
純アルコールの目安は下記表の通りです。
*画像引用 田辺薬局 https://www.tnb.co.jp/blog/detail/id=609
少量の飲酒で顔が赤くなる等アルコール代謝能力の低い方や65歳以上の高齢者においては、より少量の飲酒が適当である事に留意しましょう。*1
③休肝日の有用性
アルコールの摂取量に関わらず同じ量のアルコールを摂取する場合は週3回未満で摂取する場合よりも週3回以上で摂取するほうが心筋梗塞のリスクが減少すると言われています。*10
休肝日はアルコール摂取量を減らす効果もあると考えられる為、意識的にアルコールを飲まない日を作る事は有用です。
以上の事から、アルコールを飲む場合は少量ずつ週3〜4回で分けて飲み、かつ意識的にアルコールを飲まない日を3〜4日作ることを推奨します。
④アルコールとうまく付き合っていくコツ
アルコールの摂取量は増えれば増えるほど心臓やがん等様々な疾患のリスクが増えます。まずは、1日あたり純アルコール量20gを守る事が重要です。休肝日や1日の摂取量に関しては、1日に沢山摂取するよりは、少量ずつ3.4日に分けて飲み、また意識的に週3日以上の休肝日を設ける事でアルコールによる死亡リスクを下げることができると考えられます。
コラム|ウコンは肝臓に悪い?
ウコンは肝臓機能の回復や強化を目的として広く利用されていますが、薬剤性肝障害の原因薬物としてウコンは報告件数が最も多く、全体の24.8%を占めていることが報告されています。
ウコンが肝障害を引き起こす要因については、ウコンの効能そのものが肝臓の負担となり引き起こされるもののほかに、アレルギー性によるもの、また、ウコンに含まれている鉄分の過剰摂取により引き起こされるものが報告されています。ウコンは二日酔いに効くという情報も流れていますが、これらはエビデンスに乏しく、害になるリスクを抱えている為、摂取は控えた方が良いでしょう。*8
参考文献
*1 厚生労働省 「アルコール」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html
*2 Tomomi Marugame et al. Am J Epidemiol. 2007 Patterns of alcohol drinking and all-cause mortality: results from a large-scale population-based cohort study in Japan
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17344205/
*3 Alcohol consumption and site-specific cancer risk: a comprehensive dose-response meta-analysis -https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25422909/
*4 eヘルスネット 「アルコールによる健康障害」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol-summaries/a-01
*5 がん対策研究所 「飲酒パターンと総脂肪の関係について」
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/299.html
*6 Tobacco smoking, alcohol consumption and their interaction in the causation of hepatocellular carcinoma
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10699921/
*7 Hyon K Choi et al. Lancet 2004 Alcohol intake and risk of incident gout in men: a prospective study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15094272/
*8 日本医師会ホームページ 「ウコンについて」
https://www.med.or.jp/people/knkshoku/ukon.html
*9 https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(04)01599-9/fulltext
*10 Kenneth J Mukamal et al. N Engl J Med 2003 Roles of drinking pattern and type of alcohol consumed in coronary heart disease in men